推薦図書

「言語技術教育の体系と指導内容(明治図書出版)」 (1996)
三森 ゆりか 著

 国際社会で通用する言語感覚、言語技術を身につけるためには、母国語である日本語による言語技術の訓練を積み重ねていくことが大事である、と著者は言う。一見、矛盾するようだが、母国語である日本語が英語をはじめとする第2言語の基礎となるのだから、その母国語をまずもって国際社会の流儀に沿った形に鍛えるべきだ、というわけである。

 私たちがふだん何気なく行っている(日本語による)言語表現は英語による言語表現と大きく異なっている。例えば、私たちがふだん何気なく行っている会話の中には、(こちらの言わんことを相手が察してくれることを前提として)主語を省略するなどの言語表現が多々みられるが、英語では主語を省略する表現はあまりみられない。また、日本語での話し方(書き方)は、最後に結論をもってくる帰納型であることが多く、結論を先に述べ、後から理由を述べる演繹型の英語などとは正反対である。

 日本人の英語が通じにくいといわれる理由のひとつは、このような言語感覚、言語技術上の違いに無自覚のまま、日本語の言語感覚のままで英語を話そうとするからである、と著者は言う。母国語である日本語の言語感覚、言語技術も否定されるべきではないが、加速度的に国際化が進む中、それに対応すべく、私たちは即座に英語に翻訳できる、もうひとつの「日本語」を身につける必要がある。

 著者は、国際的に通用する(日本語による)言語技術を駆使できる日本人を育成するため、小学生を対象とした「つくば言語技術教室」を開いている。本著では、著者が教室で実践している言語技術教育のカリキュラムや指導内容、教材が事例とともに余すところなく紹介される。「問答ゲーム」「ショウ・アンド・テル」「ナハ・エアツェールンク(再話)」「短文つくり」「ディベート」など、ドイツの言語技術教育のカリキュラムを下敷きに考案されたカリキュラムは(専門外の私にとって)どれも新鮮で興味深い。

 将来、海外で働きたいという学生、教員になりたいという学生にはぜひ読んでほしい本である。本書を読むだけでも、自身の日本語(言語技術)を見直すきっかけとなり、それを改善するための手がかりを得ることができるだろう。

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 残念ながら本書は絶版になっており、本学の図書館には収蔵されていません。貸出を希望される方は、図書館の蔵書取り寄せサービスをご利用ください。また、類書もいくつか出版されているようです。以下にリンクを示しておきます。ご参考ください。

つくば言語技術教育研究所:http://members.jcom.home.ne.jp/lait/booklist.html


ブログの情報

情報には、データベースのようにいつでも参照可能なストック情報と、リアルタイムゆえ一定期間のみ有効なフロー情報があります。ホームページはストック情報の公開、ツイッターはフロー情報の公開、ブログはその両方の目的に向いているメディアといえます。

私のブログは、備忘録代わりに使っているということもあって、ストック情報の割合が高く、どちらかといえばホームページに近いといえます。引き続き、ストック情報を増やしていきたいと思いますが、ストック情報は主に(サイドバーにある)他のページで公開しており、しかも、そこでの変更・更新は自動的に記録・表示されないため、気づかれない方もおられるようです。

卒業研究のテーマ一覧なども公開しておりますので、ゼミ選びの参考にご覧ください。


「情報の呼吸法」読了

「情報の呼吸法(朝日出版社)」 (2012)
津田 大介 著

著者の関心は、いかにして”情報を行動に移すか”に置かれている。そして、互いに思っていることや行なっていることをリアルタイムに発信・共有できるツイッターなどのソーシャルメディアの普及がそれを可能にしたという。実際、ソーシャルメディアは、旧来のメディアと異なり、ローカルなコミュニティによる「しばり」から個人を解放し、これまでつながりのなかった人とのつながりを築くのに役立っている。こうした人と人とのつながりはソーシャルキャピタル(人間関係資本)とも呼ばれ、ときに「誤配」による個人の気づきをもたらしたり、個人が困難に陥ったときの解決法を与えたり、社会的なムーブメントを引き起こしたりすることを可能にしている。ソーシャルメディアを活用してソーシャルキャピタルを豊かにするうえで大事なのは、自分も他者にとっての人間関係資本の一部であることを自覚し、目先の損得勘定を抜きにして、オンライン上では利他的に行動することである。東日本大震災直後、情報の「ハブ」として機能することに徹し、震災・原発関連情報や被災地のリアルな状況をツイッター上に積極的に流し、情報を必要とする人に情報を発信し続けた著者の言葉ゆえ説得力がある。今後、ソーシャルキャピタルの重要性が増すとともに、ソーシャルメディアの役割も大きくなっていくだろう。私たちの情報環境はすでに新しい局面に入りつつあることを実感させられる一冊。


2011年度 推薦図書(追加)

「科学的思考のレッスン(NHK出版新書)」(2011)
戸田山 和久 著

今後、原発を推進すべきか、廃止すべきか。その意思決定は、科学者(だけ)ではなく、非科学者である一般の市民にゆだねられている。そこで一般市民に求められるのは、科学者と同量の科学的知識ではなく、科学という営みはどんなものか、科学はどう進んでいくか、科学で解決できる(できない)問題は何か、といった科学リテラシーである。仮説、理論、モデル、事実、観察、測定、演繹、帰納・・・、これらの「科学について語る言葉」を知っている人がどれだけいるだろうか。科学・技術の専門家にお任せのパターナリズムから脱却し、すべての市民が科学をコントロールできるだけの科学リテラシーを身につけるべきだ、と著者は言う。東日本大震災と原発事故の被害を受けて、国も市民による科学・技術ガバナンス(科学・技術に関する意思決定に市民も参画し、影響力を及ぼすこと)の重要性を認識しはじめている。社会はゆっくりだが、その方向に確実に歩みを進めている。「デキル市民」になるためにも読んでおきたい一冊。

ちなみに、対照実験や二重盲検法、相関関係と因果関係の違いなど、疫学に関する話題も扱われている。予習・復習のつもりで読んでみてはいかがでしょうか。


告知

2012年3月8日(木)に、新見公立大学・短期大学看護学科の教育研究発表会が開催されます。
これは、本学看護学科の教員と臨地実習施設指導者が1年間の教育・研究の成果を発表する会で、今年で6回目となります。詳細は以下のとおりです。

会場:新見市学術交流センター 交流ホール
受付:12:45~
開会:13:15
発表:13:20~
閉会:14:35

ご関心・興味のある方はぜひご来場ください。
学生の参加も歓迎です。

なお、私の発表は14時から第Ⅲ群にておこないます。
テーマは「高齢者家族介護者における援助要請とその関連要因」です。


卒業研究のテーマ一覧

過去3年間の卒業研究(看護研究)のテーマ一覧を掲載しました。
上のタブもしくは右のサイドバーにある「卒業研究のテーマ一覧」から閲覧することができます。


研究室蔵書

「研究室蔵書」に47冊の本を追加いたしました。


2011年度 推薦図書(追加)

「ニホン英語は世界で通じる(平凡社新書)」(2010)
末延 岑生 著 

英語を話す人は世界で約20億人。そのうち、英米人は4億人。残り16億人は非英米人で、中国英語やフランス英語、インド英語などの自国なまりの英語を話しているという。英語はもはや「英米人の言語」ではなく、様々な国の人々が話す「国際語」となっている。自国なまりの英語でも実際場面では十分通じることのほうが多く、大きな問題はないという。だから、(子音に母音を加えて単語通りに区切ってしゃべる)カタカナ英語に特徴づけられるようなニホン英語だって、英語なまりの一つとして考えればよいのだという。本書の中で展開される、「ニホン英語」を否定し、英米語こそ「正しい英語」と信じて疑わず、ただ一途に英米流の発音や文法、表現を真似ることを目標とする日本の英語教育への批判は、英語教育にさんざん苦しめられてきた私にとって痛快ですらある。他の国々の人々と同じように、どだい無理な英米語の真似に苦心するのではなく、通じる自国流の英語が使えることを目標とすべきではないか。この言葉に、私を含め、英語を苦手とする多くの学生が勇気づけられることと思う。ちなみに、筆者は、英語教育界では通じないとされるニホン英語が実際、世界でどの程度通じるかを研究する学問をエラオロジー(エラー学)として提唱し、本書の中でその研究成果をいくつか紹介している。例えば、日本の英語教育では誤りとされる英語表現(例:My family is four. )であっても、約8割のアメリカ人に理解されるという。理解度の低い表現はともかく、理解度の高い表現はニホン英語として使ってよいのではないかと提案する。なかなか興味深い研究分野であり、今後の研究成果が楽しみである。


2011年度 推薦図書

2011年度の推薦図書として、以下の3冊を取り上げました。

欺術(ぎじゅつ)―史上最強のハッカーが明かす禁断の技法(ソフトバンク・パブリッシング)」(2003)
ケビン・ミトニック、ウィリアム・サイモン 著 岩谷 宏 訳

ソーシャルエンジニアリングという言葉をご存知だろうか。これは、人の信頼や親切、同情心、油断などを利用して、必要な情報を不正に入手する技術という意味である(ゆえにタイトルの「欺術」であり、社会工学という意味ではない)。FBIが恐れた史上最強のハッカーであるケビン・ミトニックが、ソーシャルエンジリアリングの巧妙な手口と対処法を解説する。無論、悪用は厳禁である。個人情報をはじめとする情報資産を守るため、読んでおきたい一冊。

「私たちはこうして「原発大国」を選んだ-増補版「核」論 (中公新書ラクレ)」(2011)
武田 徹 著

昨年3月11日に起こった東日本大震災は、地震・津波による被害のみならず、これまでの日本社会のあり方を根底から見直さざるを得ないほどの甚大な原発事故をもたらした点でかつての震災とは大きく異なる。戦後、私たちはいかにして原発を受け入れるに至ったか。原発推進派/反対派の単純な二項対立図式に陥って思考停止にならないためにも、ぜひ読んでおきたい1冊である。

からくり民主主義(新潮文庫)(2010)
高橋 秀実 著

民主主義は「民」は「みんな」のことで、「みんな」が主になるのが民主主義。だが、そんな「みんな」はどこにもいない。そこで、「みんな」を捏造する「からくり」が必要になる。政治家やマスコミは至るところで「みんな」を捏造し、その代弁者として発言する。しかし、である。著者は諫早湾干拓問題や沖縄米軍基地問題、若狭湾原発問題等の当事者らへの取材を通じて、マスコミなどによって捏造された「みんな」の声が当事者一人ひとりの声といかにズレているかを明らかにする。メディアリテラシーを身につけるために読んでおきたい本。


短期大学看護学科 閉校式に寄せて

大学1、2年生へ以下のメッセージを送りました。

本学に着任して3年が過ぎようとしていますが、このわずかな間に、大学の開校と短期大学の閉校という重要な節目に立ち合い、参画することができ、大変光栄に思うと同時に、その重責に身の引き締まる思いで一杯です。本年度をもって短期大学は閉校しますが、32年間の歴史の中で培われた精神や伝統は、大学の礎として、また、大学のこれからを方向づける羅針盤として継承されていくことと思います。在学生のみなさんは、“巨人の肩の上に乗っている”ことを忘れず、自信と誇りをもって、これからの大学の歴史を刻んでいってください。皆さんのますますのご活躍を期待しています。