原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(8)

2012年5月17日

「序論」成立論争と南都法相系成立説(その5)
◆国東文麿氏は、震旦部〈法宝部〉が天台五時教判によっている点を指摘し、「三国を通じて、その仏教組織の基準に天台思想がある」とし、編者説として、「白河院を中心とする特定の近臣群と筆録者(僧侶)のグループ的作品」としましたが、後、「『今昔』全巻は俊頼の作としてよいと思われる」と、源俊頼編者説を提唱しました。
(国東文麿氏『今昔物語集成立考』早大出版・増補版一九七八)。
(国東文麿氏『今昔物語集作者考』武蔵野書院・一九八五)。

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(7)

2012年5月16日

「序論」成立論争と南都法相系成立説(その4)
◆片寄正義氏は、隆国説を否定し、「撰者は天台関係の僧侶か、少くも此の宗に相当深い関心をもつ者であるらしい」とし、「撰者に擬せらるゝ人物(試論)」として、「鳥羽僧正覚猷」「忠尋僧正」「源俊頼」「知足院関白藤原忠実」をあげています。
(片寄正義氏『今昔物語集の研究 上』芸林舎・復刊一九七四)。

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(6)

2012年5月15日

「序論」成立論争と南都法相系成立説(その3)
◆坂井衡平氏は、「著者の属せし宗派は果して何れなりしか。」「全体の宗教的記述と説教の態度とよりして、南都六宗なる旧仏教の出身に非ざる事は明かなり」「本朝部の話譚にても、真言宗よりは寧ろ天台宗に近かりし」としました。
(坂井衡平氏『今昔物語集の新研究』名著刊行会・復刊一九六五)。

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(5)

2012年5月11日

「序論」成立論争と南都法相系成立説(その2)
◆天台成立説には、山門系(延暦寺系・慈覚大師系)の天台成立説と、寺門系(園城寺系・智証大師系)の天台成立説があります。山門系(延暦寺系・慈覚大師系)の天台成立説としては、以下の諸説があります。

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(4)

2012年5月9日

「序論」成立論争と南都法相系成立説(その1)
◆『今昔物語集』(以下、『今昔』と略)の成立に関しては、天台成立説と南都成立説があり、これまで天台成立説が定説とされてきました。最初に、『今昔』の成立に関する主要な学説の要点を簡単に整理しておくことにします。

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(3)

2012年5月8日

◆本書の「目次」は以下のとおりです。

口 絵
「法相曼荼羅図」(重要文化財、鎌倉時代。根津美術館藏)
「『三国伝灯記』上巻」(表紙裏・一オ、慶應義塾図書館蔵)

序 論 成立論争と南都法相系成立説

第一編 天竺部考
第一章 『今昔物語集』天竺部仏伝説話の意味
第二章 『今昔物語集』天竺部「仏後」「仏前」の意味
第三章 『今昔物語集』天竺部と前生譚・本生譚
第四章 『今昔物語集』天竺部の構成

第二編 震旦部考
第一章 『今昔物語集』震旦部五時教判の意味
第二章 『今昔物語集』震旦部の孝養譚
第三章 『今昔物語集』震旦部巻九の編纂意図
第四章 『今昔物語集』震旦部の上限年代の意味

第三編 本朝部考
第一章 『今昔物語集』における「今昔」の意味
第二章 『今昔物語集』の「仏法」と「世俗」
第三章 『今昔物語集』巻一一の日本仏法伝来史群の意味
第四章 『今昔物語集』と『日本往生極楽記』の関係
第五章 『今昔物語集』における「末世」の意味

第四編 南都成立疑問説の検討
第一章 法相教学と『今昔物語集』
第二章 『今昔物語集』における二諦説と往生話
第三章 『今昔物語集』と法相宗の相承
第四章 『今昔物語集』における法華経霊験譚群の意味

第五編 外部徴証の検討
第一章 『今昔物語集』と『三国伝灯記』
第二章 『法華百座聞書抄』における法相宗僧侶の役割

結 論 南都の唱導と説話文学

〔付表1〕今昔物語集全巻構成表
〔付表2〕今昔本朝法宝部表題と法相宗三時教判分類

初出論文一覧
あとがき
索  引

http://www.bensey.co.jp/book/1637.html

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(2)

2012年5月3日

◆本書は、長年にわたって論争が行われてきたにもかかわらず未解決のままであった『今昔物語集』の成立圏の問題を正面から取り上げ、その解明を試みたものです。『今昔物語集』の成立に関しては、これまで天台成立説が有力とされてきましたが、それに対し、内部徴証に反すると否定されてきた南都成立説を取り上げ、内部徴証・外部徴証の両面から総合的に検討しました。

原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(1)

2012年5月2日

◆原田は文献研究として平安時代末期に成立したと推定されている『今昔物語集』の研究をしています。単著としては、原田信之著『今昔物語集南都成立と唯識学』(勉誠出版、全480 頁、2005年3月刊)があります。以下、『今昔物語集南都成立と唯識学』の内容紹介をします。

沖縄・多良間島の平家伝説(75)

2012年5月1日

◆以上で、沖縄県多良間島の平家伝説に関する調査報告と考察を終えることにします。
ここで紹介している話は原則として原田が採集したものですが、わかりやすくなるように改変し、あらすじのみを紹介しています。採集したままの原話と詳しい解説を知りたい場合は、原田が執筆した学術論文(原田信之「沖縄・多良間島の平家伝説」新見公立短期大学紀要26、2005所収)を参照してください。(*研究等で本文を引用される場合は、学術論文の方を引用し、必ず出典を明記してください。)

沖縄・多良間島の平家伝説(74)

2012年4月26日

◆琉球王権北端の奄美と琉球王権南端の先島に平家伝説がある点が注目されますが、その理由の一つとして、奄美も先島も首里と地理的に離れているため琉球王権の影響力が比較的緩やかであったことが関係しているように思われます。多良間島の平家伝説は、日本や琉球王権の影響力の問題を考察するうえでも重要な意味を持つものといえるでしょう。